第5回 職場で自分から話しかけるのが苦手。遠慮しすぎずにコミュニケーションを取るには?
二本柳 聡美 氏
私は自分から積極的に話しかけるのが苦手なところがあり、言いたいことが言えずに我慢してしまうことが時々あります。仕事上、質問しなくては次に進められない時なども、「話しかけなくては」と思うとよけいに緊張してストレスになっています。相手が自分をどう思うか、どんな反応をするかが気になり過ぎて、話しかけるタイミングにも内容にも、自信がないのです。職場で、遠慮しすぎずにコミュニケーションできるようになるにはどうしたら良いのでしょうか。仕事で誰とも話さない日はないので、毎日どうにかしたいと悩んでいます。誰とでも気軽に話せる人が羨ましいです。ぜひアドバイスをお願いします。(24才・女性)
ご相談者様は、積極的に話しかけたり、質問したりするのが苦手とのことですね。新年度を迎え、新しい部署に配属になったり、仕事内容が変わったりすることの多いこの時期は、周りの人に質問しなくては次に進められないという場面は特に増えることが考えられます。仕事を円滑に進めていく上で重要な要素の一つ「職場におけるコミュニケーション」について考えてみましょう。
コミュニケーションの取り方や人間関係の持ち方には大きく分けて三つのタイプに分けることができます。まず一つ目は「攻撃的」タイプ。他者より自分を優先したコミュニケーションを取る傾向があります。そして二つ目は「消極的」タイプ。自分のことは二の次、三の次で、他者を優先する傾向があります。今回のご相談内容を拝見すると、話しかけようとすると緊張してしまう、遠慮しがち、自分の言いたいことを我慢してしまう、とのことですので、「消極的」タイプのようですね。他者のことを気遣い、尊重することは大切ですが、相手のことを気にしすぎて、仕事に必要なコミュニケーションが取りづらいと感じてしまうと仕事も進めにくいですね。
「消極的」なコミュニケーションになってしまう原因としては、自分に自信がなく、劣等感が強い場合が多いようです。質問しなくては次に進められない時なども、相手が自分をどう思うか、どんな反応をするかが気になり過ぎて、話しかけるタイミングにも内容にも、自信がないとのこと。きっと、「忙しそうにしている時に声をかけたら、迷惑なのではないか」「こんな質問をしたら能力が低いと思われるのではないか」と考えてしまうのかもしれませんね。責任感の強い人ほど、「どんな仕事でも、完璧にこなさなくてはならない」「絶対に、失敗したり、人に迷惑をかけたりしてはならない」「どんな時も人に頼らずに自分で解決するべきである」と考え、ついつい一人で頑張ってしまいがち。また、「人は誰からも好かれなくてはならない」というような考え方が、相手が自分をどう思うか気になってしまい、自分に自信が持てない原因になっていませんか。どんな仕事も一人で完結できることはありません。確認や質問をしなかったためにミスが生じてしまったら、職場全体の損失にもつながりかねません。まずは「仕事を進めるため」と割り切るのも大切かもしれませんね。
「攻撃的」にも「消極的」にもならず、自分のことも相手のことも大切にし、お互いにwin-winの関係を目指すコミュニケーションの取り方を「アサーティブ・コミュニケーション」と言います。三つ目のタイプは、この「アサーティブ」タイプです。いつも「アサーティブ」でいるためには、自分はどうしたいのかを明確にし、「尊重」することです。そして、相手に対する思いやりや配慮をきちんと「表現」することが大切です。そのどちらも実践する方法として、まずは「クッション言葉」を使ってみましょう。例えば、今まで「あの・・相談したいことがあるのですが・・」と話しかけていたとしたら、「お忙しいところ申し訳ございません。相談させていただきたいことがあるのですが、今、少しだけお時間よろしいでしょうか。」というように。自分の主張と相手への思いやりの両方がこの一文で伝わりますよね。 “予約”を取るのも効果的。例えば、「●●について相談させていただきたいのですが、▲時頃から10分ほどお時間頂けますでしょうか。」というように。無事に予約が取れたら、相手に必要以上に時間を取らせることがないように質問したいことや確認したいことを予めメモしておき、端的に話せるようにしておくと良いでしょう。困っていること、聞きたいことは自分で抱え込まず、小出しにして常に相手の耳に入れておくことは、仕事を効率良く進めるためにとても効果的です。相手のほうからも気にかけてくれるようになったら、コミュニケーションがさらにスムーズになりますね。
逆に、ついイライラしがちで、トゲのある言い方をしてしまう人、相手の状況や気持ちへの配慮が足りずに自分の価値観や言い分を押し付けてしまいがちな「攻撃的」タイプも、実は「消極的」タイプと同じです。「こうあるべき」「こうしなければならない」という考え方から、強い不安を感じ、心が落ち着く余裕がないことが多いようです。どちらのタイプの方も、自分の気持ちや考えを大切にすることと、相手に対する思いやりを持つことの両方を意識して真摯な気持ちで伝えれば、お互いに気持ちのよいコミュニケーションが取れるはず。そして仕事もきっとうまく回り始めます。応援しています!
二本柳 聡美 氏
サービス会社の営業担当として勤務する中、キャリアコンサルタントの資格を取得。大手人材紹介サービス会社やハローワークでの就転職支援を経て、キャリアコンサルタントとして独立。現在は、首都圏の企業や自治体、教育機関などで、キャリアカウンセリングや研修・セミナー講師の仕事を通して、主に女性のキャリア支援及び学生の就職支援に携わる。プライベートでは、一男一女の母。国家資格キャリアコンサルタント登録。2級キャリアコンサルティング技能士。東京外国語大学卒。東京都出身。